利益とは、収益から費用を差し引いたものを指します。
企業の利益は決算書のうち、損益計算書で計算され、企業がどのような活動で利益を上げたか分析することができます。
損益計算書に記載される利益にも種類があります。その違いを確認していきます。
古藤 靖憲
株式会社Balance Network / freee認定アドバイザー3名在籍
税理士事務所で財務会計の道を歩んで10年、「企業にとってあるべき社外パートナーの役割とは?」を追求し続け、「その会社が永続的に成長し続けることのできる財務環境を整えること」がその答えであると、31歳のときに独立し、株式会社バランスネットワークを設立。
損益計算書は会社の利益を知ることができる決算書類です。
損益計算書には収益・費用・利益が記載されています。
決算時に収益から費用を差し引いた利益を知るための書類で、会社が
「何にどのくらい費用を使ったか」
「どのくらい売上がでたか」
などを分析することができます。
また、損益計算書を正しく読み解くと、本業と本業以外のどちらで利益があがっているかも判断できます。
さらに損益計算書の変動費と固定費を分けることで、黒字と赤字の境界線を表す「損益分岐点」の見極めが可能です。
損益分岐点は赤字の会社が「どこまで売上が上がれば黒字化するか」や黒字の会社が「どこまで売上が下がれば赤字化してしまうか」判断する目安になります。
会社の経営状態を分析する上でも、損益分岐点は重要な指標となります。
損益計算書には収益・費用・利益が記載されており、売上高から費用を差し引くことで最終的な利益を計算します。
損益計算書から分かる利益の区分には
「売上総利益」
「営業利益」
「経常利益」
「税引前当期純利益」
「当期純利益」
の5つの段階があります。
一般的に粗利と呼ばれています。売上高から売上原価を差し引いたもので以下の式で表します。
売上総利益=売上高-売上原価
商品やサービスそのものの儲けであり、最も根本的な利益となります。
売上原価とは仕入原価のことで、当期に販売された商品の仕入原価が該当します。
売れ残りである在庫分は売上原価としません。
売上総利益が大きいほど、営業利益や経常利益が出せることになります。
・売上高
売上高は本業の対価として得られる収益で単に売上とも呼ばれます。
原則として商品やサービスを顧客に引き渡した時点で計上されるため、実際に現金が手元に入る時期と異なります。
企業において利益や利益率よりも売上高を増やすことに注力する場合がありますが、資金繰りの悪化に陥るというリスクが存在します。
・売上原価
売上原価は、商品を仕入れる際や製造する時にかかる費用です。
売上高から売上原価を引いたものが売上総利益になるので、売上原価が少ないほど儲けは大きくなります。
売上総利益が十分に確保できていない場合や赤字である場合、会社の事業モデルが存続の危機に瀕しているといえます。
充分な売上総利益が上げられない事業モデルは、継続するか方向転換するかの判断が求められます。
会社の営業活動によってもたらされた利益のことで、売上総利益から「販売費および一般管理費」を差し引いたもので、以下の式によって表されます。
営業利益=売上総利益-販売費および一般管理費
「販売費及び一般管理費」とは、会計期間に発生する費用のうち販売部門や管理部門で発生したコストのことです。
売上原価にならない広告宣伝費、販売手数料、人件費、家賃、減価償却費などが該当します。
営業利益が大きければ経営状態が良好であり本業で儲かっていると言えます。
営業利益が赤字の場合、営業損失や本業赤字と言われる状況にあります。
本業の継続が困難であり、また投資家などから投資を望むこともできません。
そのため、営業利益が赤字の場合は「販売費及び一般管理費」を削減して黒字にするための対策が求められます。
企業が通常行っている業務の中で得た利益のことで
「営業収益」
「営業外収益」
「営業外費用」
を計算して表します。
経常利益=営業利益+営業外収益-営業外費用
・営業外収益
営業外収益は、企業の定款で定められている本業の営業活動以外によって得られる収益のことで、主に財務活動によるものになります。
預貯金や貸付金の利子である「受取利息」や、国債や地方債、社債などの債権や株券から発生する「有価証券利息」のほか「受取配当金」「売買目的の有価証券売却益」「有価証券評価益」「仕入れ割引」「為替差駅」「雑収入」などが、営業外収益に含まれます。
間違いとしてありがちなものに、本来売上高に計上すべき収益を営業外収益としているケースがあります。
誤って計上してしまうと本業の収益力が低いと見なされるので注意が必要です。
・営業外費用
営業外費用とは、本業における営業活動以外において、継続的に発生する費用のことです。
一般的には財務活動から生じる費用を指します。
「売上債権売却損」
「売上割引」
「社債利息」
「為替差損」
「有価証券売却損」
「借入金の支払利息」
「貸倒引当金」
「貸倒損失」
などが営業外費用に含まれます。
営業外費用と営業外収益を併せて「営業外損益」と呼びます。
税引前当期純利益は、法人税などのその期に納めるべき税金を支払う前の利益額です。
税引前当期利益=経常利益+特別利益-特別損失
・特別利益
特別利益は、事業を行う上で継続的に発生する利益とは違い、本業とは無関係に一時期だけ臨時的に発生した利益のことです。
不動産などを売却したことによる「固定資産売却益」や長期保有していた株式や証券の「売却益」などが該当します。
特別利益は、企業にとって通常発生しない利益となります。
そのため、特別利益が大きくても業績が良いことにはなりません。
・特別損失
企業の事業とは無関係の、臨時的に発生した損失のことです。
特別損失に該当するものは、損失の性質や金額から個別に判断します。
不動産の「固定資産売却損」や長期保有株式の「売却損」の他、火災や盗難、災害による「損失」などが含まれます。
また、特別損失はその時だけの例外的な損失のため、金融機関の融資は何に影響することは少ないです。
税金を納める際は、税引前当期純利益が課税原資となり、企業活動を通して得た利益の最終的な値に近い者です。
ただし、非定常的な利益や損失を含んでいるため、突発的な事情により大きく変動する可能性があります。
当該決算期における最終的な利益のことです。
税引前当期純利益から
「法人税」
「法人住民税」
「法人事業税」
などの税金を差し引いたものとなります。
当期純利益=税引前当期純利益-税金(法人税・住民税・事業税)
当期純利益は、その事業年度の最終的な成果を表す利益となります。
株主や投資家から見た場合、純利益は競合他社と収益面での比較材料になるもので、前年度から企業がどの程度成長したかを見る際に重要視される指標です。
株価に対しては、事業の業績を示す経常利益の方が影響は大きいですが、配当金の原資となるのは当期純利益であるので株主からは注視されます。
経常利益は、企業が行っている事業全体で経常的に得た利益のことを指し、企業の実力を表すものとも言えます。
本業で儲けていたとしても、本業以外の事業で借入金が多く返済額が多い場合や、利息を支払うための負担が大きい場合、経常利益は減少します。
売上高や営業利益だけでは分からない、企業の儲ける力を推し量ることができます。
また、経常利益の総額以外にも、売上高に対する経常利益の割合を示す経常利益率を見れば、より詳細に会社の業績を判断できます。
一般的には経常利益率が10%程度であれば企業の業績は好調といえます。
経常利益を分析することで得られるメリットとデメリットについて確認しましょう。
経常利益は、非定常的な項目を考慮せず、当期に偶発的に発生した利益や損失を含まないため、企業の次年度の当期純利益を予想するにあたって基礎的な値として活用できます。
また、企業活動を行った結果として見ることができるので、役員や従業員に対しての意識付けの値として活用できる点もメリットといえます。
経常利益は企業としての総合的な収益力を示すため、経営の成績表としてみることができます。
また、他者の経営利益を見ることで、経営動向を判断する投資判断材料にもなります。
経常利益が示す利益は、不動産投資や資金運用などの財務活動も含みます。
そのため、本業では利益を上げている場合でも、債務返済などにより数字が低くなることがあります。
そのため、内情を知っている管理部門以外の社員にとって、納得しづらい数値となる可能性があります。
経常利益を含めた損益計算書を見ることで自社の現状を分析できます。
自社分析を行う場合は細かい分析をするよりも、経常利益の数値から会社の大まかな健康状態を捉えることから始めると良いでしょう。
損益計算書に加えて貸借対照表とキャッシュフロー計算書の財務三表を見れば、大局的な分析が可能です。
キャッシュフロー計算書についてはコチラの記事を参考に
【エクセルで簡単に】キャッシュフロー計算書の作成
経常利益を売上高で割った値を「売上高経常利益率」といい、この割合によって営業利益以外の財務活動も含んだ経常的な営業状態を知ることができます。
加えて、資金調達や運用面を含む自社の総合的な収益性を見ることも可能となります。
また、企業の業績は1年ごとに決算という形で評価されますが、経営状況の場合は複数年で比較する必要がある場合もあります。
将来的に成長が見込める事業に取り組んでいる場合では、成長途中の年だけで判断してしまうと評価は低くなりやすいです。
複数年に渡り傾向を分析し判断することが必要となります。事業を取り巻く環境は日々変化しています。その影響を受けるのが経常利益です。
複数年に渡り比較することで変動要素を捉えることができ、経営状況の適切な分析を行えます。
経常利益からは自社の成長性に関する判断はできますが、業界内での自社の立場を分析する場合は、他社との比較が必要になります。
他社との比較分析によって自社の経営状況を客観的に把握できるようになり、株主や従業員に納得を得られる成長目標の設定ができます。
同業他社の経常利益は、上場企業であれば投資家向けのウェブページなどから有価証券報告書や決算説明会資料などのIR資料を確認できます。
非上場企業の場合はデータリサーチを行う企業のサービスから確認できます。
企業の利益のうち、経常利益は損益計算書の指標と一緒に見ることで、企業がどれくらい稼ぐ能力があるのか把握できる重要な指標です。
営業利益が黒字になっていても、経常利益が赤字であるようでは収益が安定しているとはいえません。
経営を維持するための対策が必要となります。
株式会社バランスネットワークは熊本を元気にしていくため、キャッシュフロー経営に特化した活動を行っています。
会社の目的を明確にし、キャッシュフロー利益を確保するための計画立案から実行までのチーム構築と運用サポートを行います。
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