組織を経営、運営するなら、良い組織づくりを目指したいものです。
しかし良い組織とは、具体的に何を指すのでしょうか。
現状、組織を感覚で動かしている方、結構多いです。
感覚だと社員に伝わりにくく、規模が急激に大きくなって苦しむ経営者をたくさん見てきました。
経営組織とは何なのか
そもそもの組織の定義
感覚では済まされない事態を避け、良い組織づくりの方法を分かりやすく解説していきます。
古藤 靖憲
株式会社Balance Network / freee認定アドバイザー3名在籍
税理士事務所で財務会計の道を歩んで10年、「企業にとってあるべき社外パートナーの役割とは?」を追求し続け、「その会社が永続的に成長し続けることのできる財務環境を整えること」がその答えであると、31歳のときに独立し、株式会社バランスネットワークを設立。
一般的に組織という言葉は
「ある目的を目指し、いくつかの物と何人かの人で形作られる秩序のある全体」
を意味します。
一般的に組織は、厳密な定義ではなく、緩いイメージで目的を持つ集合体や協同体のような意味として理解されています。
世の中には、この緩やかだが一定のルールのある集まりが星の数ほど存在します。
ただ自分の会社における組織が何に当てはまるものなのか、経営者が知っておくと問題のボトルネックを解決するのに非常に役立ちます。
社会学とは組織や国の制度について研究する学問分野のことです。
社会科学における組織の定義はこうです。
共通の目的を有し、目標達成のために協働を行う、何らかの手段で統制された複数の人々の行為やコミュニケーションによって構成されるシステムのことです。
社会科学視点での組織の目的を簡単に言うと、
個人の能力をより強化・拡張するための集まっているもの
になります。
人体に例えると、構成する器官・臓器のように個々の組織は何らかの機能を持っています。
肺が強ければ、血液に酸素をより供給でき、激しい運動を持続できます。
社会学では、組織でAさんを育てたいです。Bさんを一緒のチームにして、どのような効果が出るのかを経営者は理解しておくことが重要です。
余談ですが、社会科学では、計画的な公式組織と非計画的な非公式組織を区別します。
経営学とは人の気持ち・行動心理・経費や時間をもとにし研究する学問分野のことです。
経営学における組織とは、重要な研究対象のひとつです。
アメリカの経営学者チェスター・バーナードは、組織を協働の体系として捉えられています。
意識的に調整された2人またはそれ以上の人々の活動や諸力のシステム、1人の人間の力では実現できないような困難な目標を達成しようとするときに生じる人間の協同としています。
経営学視点での組織の目的を簡単に言うと、
個々の能力により、完成物をより強化・拡張するための集まっているもの
になります。
学校の部活動でよくあるチーム一丸となって相手を倒す、そんなイメージですね。
経営学者ハーバード・サイモンは意思決定とその実行の過程を含めた、人間集団におけるコミュニケーションとその関係のパターンに注目しています。
こちらも余談ですが、組織の構造や体系を扱うマクロ組織論と、組織に属する個人や小集団に注目するミクロ組織論に大別されます。
皆さんの組織(チーム)は、どちらにあてはまりますか?
また、組む時に意識していますか??
組織を理解する上で欠かせないものに組織成立の3要件があります。
もしかすると本記事内で一番重要かもしれません。
基本中の基本、問題が起こっているならココを抑えるべきポイントです。
組織成立の要件の一つは共通目的です。
組織目的と言われることもあります。
会社を組織の例にするなら、経営理念や経営ビジョンといったものが共通目的にあたります。
共通目的は、組織を統率するための旗印といえます。
共通目的があれば組織内のメンバーは同じ方向を目指すことができます。
しかし、共通目的が曖昧ではっきりしていなければ組織内でトラブルが頻発してしまう可能性があります。
共通目的は、社会に受け入れられるもの且つ市場で有効であることも重要です。
社会や市場の需要を満たす組織であれば、長く存続できます。
協働意思とは、貢献意欲とも呼ばれ、組織内で働くうえで、それぞれが組織の役に立ちたいと芽生える思いが協働意思になります。
例えば会社内では、多くの人が各々の役割を担っています。
従業員一人一人が会社という組織の役に立ちたいという気持ちを抱いていれば、より力のある組織へ成長できるはずです。
協働意思が働くためには共通目的が重要です。
ただし、目的だけで貢献意欲が向上するわけではありません。
欠かせない要素にリターンがあります。
会社に対して貢献することで各従業員がリタ―ンを得られるという信頼が協働意思を醸成します。
従業員が期待を持つことで協働意思が生まれます。
貢献に対するリターンを感じやすい組織は、長く存続しやすくなります。
組織内には多数のメンバーがおり、メンバーのまとめ役としてリーダーが存在します。
意思疎通とは、メンバー同士の意思疎通やリーダーとメンバー間の意思疎通のことです。
組織で問題が頻発している場合、原因として意思疎通が不十分であることが考えられます。
組織を円滑に運営するためには、意思疎通は欠かせない要素です。
組織は2人以上で構成されますが、常に同じ考えで行動できるとは限りません。
構成する人間の意思疎通により組織は正常に機能します。
組織の構造にはいくつかの種類があります。
組織は大きくなるほど、機能や目的に応じた構造を自然と持つようになります。
(自然と言うと語弊があるかもしれませんが、必要性に迫られる。という意味です)
企業が持つ代表的な構造の事例を紹介します。
機能別組織は、担当する機能ごとに分けて組織を形成します。
ピラミッド型に作られた階層構造が特徴的なヒエラルキー型組織のひとつです。
ピラミッド頂点が司令塔である経営者で、下の層へ広がるにつれ、責任、機能、権限が縮小します。
それぞれの業務内専門性を最大限に活かして業務効率を高めることができます。
各々のチームが役目を果たすことでミッションを成功させる軍隊パターンです。
しかし、責任が限定的になるため、企業全体として取り組む課題には対応しにくいというデメリットがあります。
事業部別組織は、本社の下に事業単位ごとの部署がぶら下がるという形式で編成されます。
組織の中にもう1つの小さな組織があるイメージになります。
これは委員会、とかも含まれます。
このタイプの組織のメリットは、事業部内で意思決定ができるため、意思決定にスピード感があることです。
また責任の所在が明らかになることもメリットです。
デメリットは、事業部間の交流が減り、会社全体での目的統一が難しくなりやすいことです。
マトリクス組織は、機能別組織と事業部別組織の持つ長所を同時に実現できる点がメリットとして挙げられます。
ただし担当者は、2人の上司から指示を受けることになるため、混乱が生じやすく、また意見の不一致から意思決定や実効が遅れることがデメリットとなります。
ただ、上層部の意思統一がしっかりとしていれば、強力な組織となります。
チーム型組織は、プロジェクト実行のために短期的に集められた人員で構成される組織構造です。
新事業プロジェクトなどで招集する場合はこれにあたり、それぞれのメンバーが異なる専門性職種を持ちます。
専門性に特化した能力の高い人材のみで編成できるため、仕事の品質が高く、達成までの期間も短くすることができます。
ただし、プロジェクト内でのみ活動するため、他のプロジェクトを進めるメンバーとのコミュニケーションが減ってしまうことがデメリットです。
カンパニー型組織は、各事業部を作り、それぞれに意思決定の責任を持たせる組織構造です。
事業部制組織よりもさらに大きな意思決定ができ、柔軟に事業を進めることができます。
独立した会社のように業務を進められるため、事業部の管理担当者は経営者としてのノウハウを蓄えることができるなど、社員育成にも繋がります。
しかし、事業部単位で重要な意思決定をくだすため、判断に間違いがあると全体に対する大きな損害が生まれるというデメリットがあります。
このため数値管理により統制をはかることが多いです。
社会科学では、組織を公式組織と非公式組織に大別します。
簡単に言うと権限の部分になります。
決定権がなければ組織の統一が難しくなる場合があります。
これらの2つの組織の違いを知っておくことは、組織運営に携わる者にとって重要となります。
組織は、いくつかの階層がある構造を成しており、その階層構造に基づいた権限関係も存在します。
この組織構造と権限関係を組織図で表した組織構造が公式組織です。
たとえば「社長」の下に「部」があり、その下に「課」がある形で階層構造になっているものは、公式組織といえます。
一方、非公式組織は、公式組織で作成される組織図では説明できないような個人的なつながりによる組織となります。
例えばよくランチに行く仲間であったり、飲みに行く友達であったり。
こういうのって部署を通り越してあったりしませんか?
組織全体の情報伝達の効率や、コミュニケーションの円滑さなどに影響を与えます。
それらは実際に組織が効率よく動くために、欠かせない要素といえます。
組織運営を行う場合、その全てが想定通りに運営できるケースは殆どありません。
組織は通常、いくつかの問題点やデメリットを抱えています。
組織構造にはいくつか種類があり、それぞれが抱えている問題点やデメリットは異なっています。
現代社会において、よく使われている機能別組織形態に関する問題点を理解しておくことは大切です。
機能別組織は、ビジネス運営のスピード感を欠く傾向にある、と評価されています。
機能別組織には階層構造があり、重要な意思決定を行う場合は、一般的に組織の下の階層から上の階層まで順を追って承認を受けていく必要があります。
その承認には時間がかかるため、スピード感を欠いてしまいます。
機能別組織に代わる構造として増えてきたマトリクス組織も同様に、スピード感を欠くというデメリットがあります。
いずれの組織構造でも、階層が増えれば増えるほど情報が伝わる速度が遅くなるなど、意思決定のプロセスが長くなってしまうことがその理由です。
良い組織の例として挙げるなら3つあります。
1つ目は、将来にわたって存続し続ける組織です。
企業活動においても資金不足などで倒産することがあり、倒産してしまえば、それ以上社会貢献を続けることも従業員の雇用を守ることもできなくなります。
継続して生き残れる企業であることが重要であるため、存続し続ける会社組織は良い組織といえます。
2つ目は、世間に対して価値を提供している組織です。
組織は内部に対しての存在価値だけでなく、会社外部に対しても価値ある存在であることが大切です。
企業価値が世間から認められていれば、企業として存続しやすくもなります。
3つ目は、組織内のメンバーが心地よく働ける組織です。
組織に所属するメンバー全員の意思疎通や貢献意欲が高く保てる状態であれば、組織内の環境は良いといえます。
良い組織について理解が深まっても、具体的にどのような取り組みをすればよいかわからなければ、自身の組織を改善することはできません。
良い組織を作るための方法には次のようなものがあります。
組織の要件の1つでもある貢献意欲は、組織の構成メンバーが組織内の仲間や組織そのものの役に立とうとする意欲を指します。
そして、その貢献が正しく評価されることも貢献意欲を維持するために欠かせない重要な要素です。
人事評価制度の構築は、組織のメンバーが正しく評価されて貢献意欲を持ち続けるために必要な制度です。
意外とおざなりになるのがココです。
公平な人事評価制度の導入は、従業員のモチベーションアップと成長にもつながります。
そのため、人事評価を導入することがより良い組織を作っていくことに繋がります。
ビジョンや経営理念の共有も、より良い組織を作り上げるための方法です。
組織内の構成員である従業員の数が増えれば増えるほど、組織をまとめることは容易ではなくなります。
まとまりを作っていくために欠かせないものが、経営ビジョンや経営理念です。
ビジョンや理念を共有することにより、常に共通目的を意識してもらうことが可能になります。
共通目的は組織に欠かせない要件の1つです。
企業としての目標や目的を共有できれば、従業員個人の方向性を定めることにつながり、結果的に組織全体の一体感が醸成され組織は成長します。
筆者は、よく「矢印が同じ方向を向くように」という言い方をします。
誰かが異なる矢印であれば組織はうまくいきません。
そのためのビジョンや経営理念があります。
組織全員が同じ方向に向かって活動するためには、経営者は洗練された確かな経営ビジョンを持ち、そのビジョンを組織全体に浸透させることが重要となります。
教育制度の確立も良い組織を作る方法となります。
良い組織とは、社会に価値を提供し続け、企業としても存続し続けられる組織です。
そのためには、経営理念や経営ビジョンの共有のみならず、組織に属するメンバー一人一人のスキル向上も欠かせない要素です。
常に成長が求められる企業において、教育制度が確立されていることが重要となります。
教育制度は、単にスキルの向上を目的としたものでは不十分です。
共通目的・協働意思・意思疎通を中心とした教育制度を確立することにより、より良い組織づくりが実現できます。
事業の拡大を行う場合でも、そうした取り組みにより、意識の統一を望めます。
組織には様々な構造があり、またその目的は組織ごとに異なります。
自身が経営、運営する組織をより良い組織に変えていくには、組織の定義や目的、構造などを理解し、問題点解消にも目を向ける必要があります。
また、グローバルに事業を展開する場合、海外との連携には文化の違いを知る必要も出てきます。
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