企業活動を行う上で社員教員は重要な役割を担っています。
社員教育はどのような目的で行われるのか、社員教育の方法にはどのようなものがあるのか確認してみましょう。
古藤 靖憲
株式会社Balance Network / freee認定アドバイザー3名在籍
税理士事務所で財務会計の道を歩んで10年、「企業にとってあるべき社外パートナーの役割とは?」を追求し続け、「その会社が永続的に成長し続けることのできる財務環境を整えること」がその答えであると、31歳のときに独立し、株式会社バランスネットワークを設立。
社員教育は、企業内教育とも呼ばれ、企業が従業員(従業者)に対して行う教育のことをいいます。
従業員に対して、
業務に求められる能力を向上させる目的で行われる教育と、
従業員の意識や精神面に変化を起こさせる目的で行われる教育
に大別されます。
前者の能力向上の教育にフューチャーします。
こちらを細分化すると
「知識」や「技能」を付与するためのインプットタイプの教育と、
従業員に内在している知識や技能を引き出して成功に導くアウトプットタイプの教育
に分けられます。
教育の実施方法はさまざまですが、一般に
「教育の3本柱」
と呼ばれるものに
「セルフディベロップメント=自己啓発」
「オン・ザ・ジョブ・トレーニング=仕事上指導」
「オフ・ザ・ジョブ・トレーニング=集合研修」
があります。
世の中に多くのメソッドがありますが、筆者の経験上、結局はこの3つがベストです。
1つずつ見ていきましょう。
自己啓発は、自己を人間としてより高い段階へ上昇させようとする行為を指します。
自分の意思で自主的に自己を向上させ「より高い能力」や「より優れた人格」などの獲得を目指して行います。
仕事上指導、現任訓練は、職場で実務をさせることで行う職業教育のことです。
手順はこうです。
職場の上司や先輩が、部下や後輩に対し具体的な仕事を与えます。
その仕事を通じて仕事に必要な知識・技術・技能などを意図的・計画的・継続的に指導し、修得させることにより全体的な業務処理能力を育成する活動となります。
評価として熟練度で数値化したりします。
職場で実務を伴うOJTに対し、Off-JTは職場を離れて行われる訓練になります。
企業外で行われる研修やセミナーに参加し、スキルや知識を習得する教育方法です。
社員教育は、明確な目的をもってこそ効果を発揮します。
やってはいるけど、効果がない会社さまのほとんどが、教育の3本柱はやっているけど下記の骨子が入っていない事が散見されます。
企業理念や経営戦略は、従業員の意識を共有する上で大事な要素です。
企業理念、経営戦略を学ぶことで、従業員は経営陣の考えを理解し、企業に貢献できる人材へ成長していきます。
この理念がある会社とない会社では雲泥の差があります。
もし経営陣と毎日話せるような職場であれば、理念がなくとも経営者の考え方や方針を共有することができます。
しかし、そうでなければ伝わる角度が低下します。
経営陣の求める行動指針の理解は、その会社のサービスの品質にも知らないうちに影響がでるものです。
つまり理念とは、顧客に対する安定したサービスの提供に繋がります。
また、企業理念や経営理念は、企業活動の根底にあります。
その企業の果たすべき使命や、あるべき姿を社内外に向けて表明するものであり、経営者が変わったとしても不変的・持続的に受け継がれるものです。
事業遂行における基本的価値観と目的意識であるため、企業理念の理解は重要です。
従業員は接客の際、企業を代表するものとしての振る舞いを求められます。
お客様からすればスキルやキャリアは関係ありません。
一人の従業員のミスが企業の信頼を失うことに繋がってしまう可能性があります。
こうした事態を未然に防ぐためにも、新入社員向けの研修などにより、社会人の常識やビジネスマナーを習得させることが必要になります。
また、従業員としての自覚を促すためにも研修は行われます。
企業の代表であることの自覚がなければ、つい手を抜いてしまうことも考えられます。
研修によって従業員が企業の代表として接客を行っている自覚を持つようになれば、コンプライアンスなどにも注意が向くようになります。
従業員一人一人が倫理観を守りながら働くことで、企業の社会的信用の獲得に繋がります。
社員教育は、仕事に必要な知識やスキルの習得も目的です。
従業員の能力が高まれば、その分、企業の生産性は高まります。
ただし、個人のスキルアップだけで企業の生産性を高めるのは現実的に難しい面もあります。
資格取得のサポートや外部の教育機関への依頼など、企業に不足しているもの、必要なものを補う工夫も必要になります。
社員教育は、従業員が適正に業務をこなせるようにするためのものです。
しかし、無理な条件を提示したり、無味乾燥な作業に従事させたり、従業員を精神的に追い込む行為や苦しめる行為などが問題視された例もあります。
知識やスキルがないままOJTを行えば、事故にもつながる恐れがあります。
このような当たり前のことなのですが、感覚でやっていることが大半です。
ぜひ一度、社員の方に「教育の3本柱」「理念の意味」を知っているか聞いてみてください。
知識と感覚では大きな隔たりがあります。
本来、従業員の能力向上を目的として行われる社員教育ですが、リストラ教育と言って教育の名のもとに従業員を即退職に追い込む研修は社会問題にもなりました。
・精神的リストラ教育
主に、従業員に対してやっても意味のないことや無理難題を提示することを繰り返します。
研修期間と称して賃金を下げる、労働時間の減少により賃金を下げるなど、本人の会社人としての意識を減退させ、解雇することを前提にする強要のことです。
・肉体的リストラ教育
精神的リストラ教育に加えて、本人の資質に合わない肉体労働を強制する、暴力行為によって本人の会社人としての意識を減退させ、解雇することを前提にした嫌がらせのことです。
現在ではパワーハラスメントやモラルハラスメントに相当するため、正式に行われることはありません。
しかし、本来の目的を逸脱した社員教育はどのような現場でも起こり得るため、研修を行う側のモラルも問われることになります。
仕事を覚える順序などにより、同じ新入社員でも実務で活躍できるようになるまでに差が生まれます。
個々の社員ごとに求めるスキルや理想の将来像を明確にし、社員教育のタイミングや内容を細かく設定する必要があります。
新卒で入社する学生は社会経験がありません。
経験則も先入観もないため、企業の思想や仕事の方法が浸透しやすい利点があります。
教育に対する時間などのコストは必要ですが、入社間もない時期に会社の理念や、社会人としての基本的なスキルやマナー、担当業務の重要性を経験することは大切です。
注意点は、中途採用者に向けた社員教育と新卒採用者に向けた社員教育では大きく異なることです。
ここは、人数の少ない会社様ほど一緒に行っているケースが多く見受けられます。
中途採用者は基礎的な社会人としての経験があるため、マナーや社会人としての基礎知識を一から学んでもらう必要はないでしょう。
前職の経験を活かしてもらいつつ、会社の戦力として迎えるための教育が必要になります。
配属時の研修は、基本的に部門ごとに実施すべきです。
配属時の研修で学んだことは後に大きく影響するため、このタイミングでの研修は重要となります。
できるだけ早く会社の戦力となってもらうために、実際の業務内容を学んでもらいます。
一般的にはOJT教育が多く選ばれています。
OJT教育は仕事を行いながら教育できるため、早く実践投入しやすいですが、教育担当者によって教育の質に差が生まれるため注意が必要です。
指導のポイントや相談先など、教育担当者に対する指導も大切になります。
直属の先輩に相談しづらい内容でも相談できるように、別部門の社員が教育担当者を務める場合もあります。
役職者ほど感覚で仕事をするとマズイです。
なぜなら、その部下達にそのまま影響します。
昇進によって会社内での立場が変わると、より重い責任を求められるようになります。
社内での上下関係の変化によって、全体の統制にも変化が生じます。
初めて管理職に就く従業員の研修には、力を入れるべきで、マネジメントに関する悩みや課題の解決に役立つコツなどを取り入れると良いです。
定期教育は、従業員が組織人としての役割を再認識する場であると同時に、実務への意欲を高める場としても役に立ちます。
また、定期的な社員教育によって「慣れ」による怠慢などから起こり得るトラブルを未然に防止する効果も期待できます。
自分の立ち位置、役割が明確になることで、やることがシャープになり効率化されていきます。
やる気や意識の薄れによる思いがけないトラブルを防ぐことができるでしょう。
社員教育の方法は様々です。ここでは主な方法を紹介します。
OJTは、多くの企業で社員教育に用いられており、実務を通じて必要な知識や技能を身に着けることができます。
実際の業務を経験しながら、必要な知識やスキルを学ぶことができるため、即戦力化しやすいというメリットがあります。
しかし、教育担当となる社員の用意が難しい企業には適していません。
現場で教育できる技量がないなら上司が直接行わないと問題が起こることがほとんどです。
また、教育を受ける社員が、教育担当者の知識やスキル以外にも、業務への取り組み方、考え方に大きく影響を受ける可能性があり、適切な担当者の選出も効果的なOJTに必要となります。
Off-JTは職場外の研修を指し、企業外で行われる研修やセミナーに参加させて知識やスキルを習得する教育方法です。
昨今では社員が自発的にオンラインセミナーに参加するなどOff-JTを実施することも増えています。
OJTと異なり、複数の社員の教育が可能で、教育の質を均一化しやすいメリットがあります。
スタッフはその会社、その部署が社会のすべて、と思いがちです。
他社や講師と接する機会があるだけで視野が広がり良い案が生まれるきっかけにもなります。
一方で、研修参加者が実務から離れてしまう影響にも留意する必要があります。
また、外部研修への参加には交通費や宿泊費の支給が必要になる場合が多く、費用や工数がかかることはデメリットと言えます。
eラーニングは、オンラインで動画を視聴し、知識やスキルを習得する方法です。
スマートフォンやパソコンとインターネット環境があれば簡単に受講できるため、時間や場所を選ばずに学習できることがメリットとなります。
OJTのように教育担当者の用意が不要のため、社員の生産性を落とさずに実施できる社員教育方法として導入する企業も増えています。
しかし、各社員のモチベーションで効果が大きく変化するため、モチベーション維持の施策を用意する必要があります。
SDは、各社員が自発的に知識やスキル習得に努める社員教育の方法です。
企業が資格取得費用や書籍購入代の補助を福利厚生として導入したり、オンライン学習サービスのIDを付与したり、社員が自発的に学ぼうとした場合に企業側がバックアップする仕組みを作る必要があります。
ただし、強制すると学習効果が低下するだけでなく、勤務時間に含むかどうかという問題も出てくるため、あくまでも社員が自発的に学ぶことを後押しするという位置づけを守る必要があります。
メンター制度は、新入社員や若年層の社員であるメンティーを、先輩社員であるメンターが支援する制度のことをいいます。
OJTは実務に関する知識などの習得が主目的であることに対し、メンター制度ではメンティーとメンターが同じ部署である必要はなく、同じ部署の先輩社員には言えないような悩みや不安を吐露してもらう、他部署の話を聞くことで社内全体の業務を把握できるなどの効果があります。
OJTとメンター制度を組み合わせ、社内全体での社員教育を行う企業もある一方で、人手が足りない企業の場合、導入が難しいです。
ジョブローテーションは、社員の能力開発を目的とした配置転換のことです。企業の人材育成計画に基づいて行われるという点で人事異動とは異なります。
ジョブローテーションを活用する場合、数カ月単位での配置転換を繰り返すことが多く、配置転換先の業務内容を学び、社内での人間関係構築を目的として利用されます。
MBOは目標管理制度のことで各社員が設定した目標に対しての成果を評価対象とする方法です。
自ら設定した目標に対する責任感が増すだけでなく、目標達成するための行動もイメージしやすいため業務効率の向上も期待できます。
ただ、ハードルの低い目標を設定した場合は成長を期待できず、逆に阻害してしまう結果にも繋がってしまうため、各社員の目標に対するフィードバックを行い、成長機会となる目標に落とし込むことが重要となります。
コーチングは、上司が部下の目標達成を支援する教育方法です。
命令によって部下を強制的に動かすのではなく、対等な関係から問いかけを行い、その過程で部下が自ら向かう方法を決断します。
なので具体的な指示は一切行いません。
強制的な支持を行わず、部下の不安などを読み取り、改善に向かう行動に促す必要があるため、コーチングを行う側にも知識や経験が求められます。
部下への押し付けにならないような誘導も必要で、時間がかかることも珍しくありません。
社員教育は、企業活動の基盤づくりにおいて重要な役割を担います。
自社の社員教育は適切に行われているか、社員教育を行う目的を明確にし、適切な教育方法によって有望な社員を育成することが会社の将来に繋がります。
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